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インタビュー

シリーズ まだまだブレイクする 札幌の外食イノベーター 第1回

美容業界から外食ビジネスに飛び込み、「ザ・ミートショップ」などのヒット業態を生み出している株式会社BUNSの高原健一郎代表。レベルの高いデザイン力と徹底した数値分析を武器に、札幌の飲食業界に新しい〝うねり〟を巻き起こしている。


ビバリーヒルズでカット修行



小3で野球をはじめて、高校まで野球漬けでした。大学も野球推薦で!とはいかず当時の彼女の実家が美容関係の仕事をしていて、目的を失っていた僕に彼女のお父さんが「美容の仕事をやってみる気あるか。あるなら、東京へ行け!」ということで、銀座のサロンを紹介してもらいました。それが18歳の時。田舎丸出しの少年が銀座7丁目の中央通りという都会で、シャンプーやリネンを洗濯しという生活が始まったのです。その頃は上下関係の厳しい業界だったので、先輩とかけっこう厳しかったですね。そこで修行しながら資格をとって、その店には3年在籍しました。その後、ロス帰りのカッコいい先輩との縁で、ヴィダルサスーン系のビバリーヒルズのサロンに移り、約8カ月間、カットの勉強に没頭しました。


タイ料理に衝撃



サロンの近くに毎朝必ずやってくるフードカーがあったんです。そこで、ブリトーを売ってたんですよ。その当時で2、3ドルで買えたのかなぁ。太くてボリュームたっぷり。それを食べればお腹が持つんです。お金もなくて、英語もそんなにしゃべれなくて、という頃だったので、そのブリトーばっかり食べてました。今の飲食の仕事にもつながるんですけど、LAで食べたブリトーは鮮烈に記憶に残っています。あれは本当に旨かった。このようにして西海岸で勉強して24歳の時に札幌に戻ってきました。それから完全歩合のサロンで働きはじめて、口コミで顧客を増やしていきました。1999年に独立してサロンをオープンさせたんですが、それまでにタイ、インド、ネパールなんかのアジアをバックパックを背負って、ぐるっと回ったんです。その時のタイ料理に衝撃を受けたというのが大きかった。とにかく美味しいなぁ、と。


デザインをきっかけに飲食店を



最初は外食というよりも、お店を作る、デザインする、空間を作るという、インテリアの方に興味があったんです。そもそも最初の美容室も、自分でペンキを塗ったり、手作り感覚でそこそこの店舗ができたので、内装は面白い、ということになったんです。最初に飲食店を出店した「maruyamaDRiLL」は、物件が先にあって、カッコいい店を作ろう、ということでスタートしたんです。業態としては、ハンバーガーをやる、と決めていたのでニューヨークに行き、とにかくハンバーガーを食べて、内装もたくさんチェックしました。この店がイケメンブームにも乗りあちこちで取り上げてもらった。円山エリアでB級料理でも話題を仕掛けることで注目される。そして女性目線の店を作ることでいけるのではないか、と考えるようになりました。メニューひとつでも、ちゃんとデザインする、ロゴからすべて、グラフィックデザイナーと組んだ。それが現デザイナー倉内です。


「ザ・ミートショップ」の成功



次にオープンさせた「ザ・ミートショップ」は、まだ熟成肉とか塊肉とかのブームが来てない頃で、札幌に無いような業態を作ろうと思い、またニューヨークを見てまわって、熟成肉とワインというコンセプトが決まったんです。30代から50代の女性に受ける店を目指し、ちょうどfacebookなどのSNSがブームになり始めていた頃でもあり、デザインを綺麗に見せて、情報をどんどん発信し、さらにお客さんがお店の話題を発信してくれて、というbuzのサイクルを大いに役立ったと思います。

デザインを詰めて、メニュー構成など店舗の大枠を決めて、料理はほぼシェフに任せ、オープンしてからも良くないところは、すぐに改善する。という作業を繰り返しました。デザイナーが中にいるので、すぐに対応できる、というのも僕らの強みです。客単価や料理のポーション、お客様の反応などを見ながら、細かく、短期間でどんどん変えていける。現場との対話の中から、あるいはPOSデータからのリアルタイムな数値、そういったものから、単価やメニューや量といったものをどんどん改善していきます。その変化をSNSで発信していきました。


BUNS の野望



基本的には業容を拡大していきます、常に楽しく半歩先を、時として社内独立があったりもするでしょう。若い人たちのアイディアを、集客力があるBUNSのプラットフォームを使って実現させて、どんどん独立させていきたいですね。個人を尊重して、共同体の枠組みの中で伸ばしていきたいと考えています。うちにいると、デザインが大切で、その効果の大きさも理解していく。現在、2人いるデザインの部門もどんどん伸ばしていきたい。空間設計についても、内製化を目指しています。現在、4億円ある飲食店としての売り上げを、10億までは引き上げるつもりです。あまり数字に固執しているわけではないですけど・・・。


※インタビューを終えて



美容の世界から飲食の世界へ、まったく新しい切り口でヒット業態を送り出している高原さんの特徴は、何度もご自身が強調されているデザイン力にあるのだが、もうひとつ見逃せないのが、緻密な分析と素早い修正力である。システムサービスの世界には、リーン・スタートアップという考え方が存在するが、高原さんが店舗を磨き上げる手法は、ある種のリーン・スタートアップと言えるだろう。デザインというプラットフォームから繰り出される次の業態が大いに楽しみだ。

takahara1207株式会社BUNS 代表取締役 高原健一郎 氏

美容師として一定の成功を得たのち、2007年札幌円山にニューヨークスタイルの本格ハンバーガーが味わえる店「マルヤマドリル」をオープン。揚げ焼きステーキが大人気の「ザ・ミートショップ」やタイ料理の「ジダパ」など、現在4業態6店舗を展開中。

http://buns.jp/

(取材=上田正巳)

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